高血圧3 -人体の血管系と高血圧合併症

1.人体の血管系

人の血管系は血液とリンパ液を運ぶ脈管からできている。動脈と静脈は全身をめぐり、酸素と栄養素を供給して老廃物を運び出す。リンパ管は、透明無色で水分と血液細胞からなるリンパ液を運ぶ。リンパ管は免疫系のひとつで、毒物や老廃物を運びだすのに役立つ。

血液を運ぶ管は
動脈-酸素を十分に含んだ血液を心臓から全身に送る。
静脈-全身の血液を心臓に戻す。
毛細血管-動脈と静脈との間にある微小血管で、酸素と栄養素が血管から出て全身の細胞に入り、細胞内の老廃物が回収される。

血管系は他の場所でも重要な役割をしている。
呼吸器系-血液が肺毛細血管を通過する際、二酸化炭素を除去して酸素を取り入れる。二酸化炭素は肺から体外へと排出され、酸素は血液によって全身に運搬される。
消化器系-食べ物が消化されるときに、血液は腸の毛細血管を通過してブドウ糖、ビタミン、ミネラルなどの栄養物を取り込む。栄養物は血液によって全身に運ばれる。
腎泌尿器系-体内の老廃物は血液が腎臓を通過する際に血液外に排泄、尿となって体外に出される。
体温調節-体温は血液が体内のさまざまな部位を通ることにより調節される。熱は細胞が栄養物を分解してエネルギーに変え、新しい組織を作り、老廃物を捨てる際に作られる。

ジョンホプキンズ大学資料から一部抜粋-




2.高血圧の合併症

高血圧によるリスクは心疾患にとどまらず、知らない間に身体を痛め、何年も経てから症状が出現する。
血圧はミリメートル水銀柱(mmHg)という単位で測定され、一般には血圧が130/80mmHg以上の場合に高血圧と呼ばれる。薬物治療や生活習慣の改善はリスクを低下させる。

動脈の合併症
健康な動脈は柔軟で強く弾力がある。血管の内側は滑らかで血液がスムーズに流れ、臓器や組織に栄養物・酸素を供給する。高血圧の状態が持続すると下記のような病気を引き起こす。
・動脈硬化による血流の低下
・動脈瘤 

心臓の合併症
・冠動脈疾患、不整脈、心筋梗塞
・心不全
・左室壁の肥大、内腔拡大 → 心筋梗塞、心不全のリスクが増大
・メタボリック症候群 - 軽度の異常が重なった状態であり、心臓病、脳卒中、糖尿病のリスクが増大する。 
  メタボリック症候群の要素
  ・血圧の高値
  ・血糖の高値
  ・中性脂肪の高値
  ・HDL(善玉)コレステロールの低値
  ・腹部周囲の過剰な脂肪

脳の合併症
一過性脳虚血発作-脳の血流が一時的に遮断される。脳卒中の前触れ
脳卒中-脳の一部に酸素と栄養物が十分行き届かない(脳梗塞)、または脳の内外で出血(脳内出血・くも膜下出血)。脳細胞が死滅する。高血圧で障害された脳動脈は狭窄し、破れたり漏れたりする。高血圧は頸動脈など脳に向かう動脈内に血栓をきたし、脳卒中のリスクを高める。
認知症-狭窄、閉塞した動脈は脳血流を減らし、血管性認知症と呼ばれるタイプの認知症を引き起こす。単回の脳卒中、または微小脳梗塞が繰り返されると血管性認知症を引き起こす。
軽度認知障害– 同年代の成人にくらべて記憶力・言語能力・思考能力が少し落ちた状態。認知症とは異なり、日常生活を支障をきたすほどではない。

腎臓の合併症
腎臓は過剰な水分と老廃物を血液から濾過しており、健康な血管が必要。血圧が高いと腎臓に出入りする血管が障害され、高血圧に糖尿病が加わると影響はさらに増す。
血管が痛むと血液から老廃物を取り去る工程が妨げられ、水分とともに異常に蓄積する。腎臓が働かなくなった状態は腎不全と呼ばれ、治療は腎透析または腎移植。高血圧は腎不全の最も多い原因のひとつである。

目の合併症
高血圧は目を栄養する小さな血管を障害する。
網膜の障害、網膜症– 網膜は目の後方にあって、光を感知する層。網膜の血管が痛むと眼底出血、視力低下、視力の喪失をきたす。高血圧に糖尿病が加わるとリスクがます。
網膜下層の浮腫、脈絡膜症– 視力の歪み・視力低下をきたす
・神経の障害、視神経症-血流が途絶えると、光の情報を脳に伝える視神経を障害する。眼底出血や視力喪失をきたす。

生殖器の合併症
男性の勃起障害、女性の性欲減退など

高血圧緊急症
高血圧は通常、数年にわたって徐々に血管を障害するが、血圧の急激な上昇により、直ちに治療を要する緊急事態に発展する場合がある。起こりうる症状:
・視力の喪失
・胸痛
・妊娠中毒- 妊娠高血圧腎症、子癇(しかん:異常な血圧上昇による痙攣、意識消失、視野障害)
・心筋梗塞
・記憶力喪失、人格変化、集中力低下、易怒(イライラ)、意識消失
・大動脈解離(大動脈の血管壁が裂ける。致死率が高い)
・脳卒中
・急性心不全–心臓のポンプ機能が急激に低下し、肺の浮腫による呼吸困難(肺水腫-放置すれば致死率が高い)

Mayo Clinic から筆者の日本語訳による抜粋引用

Dr.Sumi