幸福は苦しみがあってこそ

幸せを得るためには、楽しみを最大限にして苦労・努力を最小限にする、という考え方は一見正しいと感じられるが、真実は大きく異なり、楽しいことだけでは幸せにはなれない。喜び・楽しみを実感するためには苦しみ・痛みが必要である。苦しみがなければ人生は面白みのない、つまらないものになり 望ましいものではない。

痛み・苦しみを体験する効用
・激しい身体運動をしたあとに、ランナーは幸福感を覚える。
  これはオピオイドという神経化学物質によるものである。
  この物質は苦しみを感じるときにも作られる。
・苦しみから開放されると幸福感が増すだけでなく、悲しみを減らす。
・苦しい体験により五感の感覚が高まって喜び・楽しさを強く感じるようになる。
  長距離走の後のスポーツドリンクが格別においしく感じられる
  一日のきつい仕事の後の冷たいビールは美味しい
  冷たいところから来たときのホットチョコレートが格別によい
・痛みの体験により(他者の痛みを見るだけでも)、他者に対する思いやりの気持ちが湧く
  2011年のブリスバン洪水で、55000人もの人々がボランティアで後片付けを手伝った
  9/11のニューヨークで芽生えた共同体意識
  ALS(筋萎縮性側索硬化症)寄附運動-アイスバケツチャレンジ
  (寄付者は氷水を頭からかぶり、動画のSNS発信や寄附をする運動)

病気・怪我・危害によって被った痛みが利益になることは少ない。けれども、痛み体験をより積極的に活用することにより、幸福度を増したり悲しみを減らすことができる。

In Pursuit of Happiness: Why Pain Helps Us Feel Pleasureからの抜粋

**投稿者の意見 “pain” という英単語について
日本語では身体の痛み・心の痛みなど、限定的な意味合いに使われますが、英語圏の国々では”pain”の中に、下記のような広い概念が含まれています。この資料でもかなりの意訳をしました。
 身体の痛み:怪我・病気・氷水バケツに手を入れたときのような外的なもの
 感情の痛み:挫折感・悲しみなど
 精神的な不快感:ストレス、不安
 比喩的な使い方:価値ある目標を得るための努力・奮闘
   例 no pain, no gain –  労なくして益なし

Dr.Sumi