7番アイアンの縁

今年10月末に、会社仕入れ先のゴルフコンペが愛媛県で開催された。それに参加させて頂いた時の出来事を、今回の思いやり通信としたい。

 そのゴルフコンペは参加者が約120名と多く、私が参加しているゴルフコンペでは別格の規模である。景品や接待などもあり、各組にキャディーさんも配置され、ドラコンやニアピンも正確に計測される本格的なものである。

私はゴルフを始めて7~8年程度だが、今までは誘われたら行く程度だった。練習もほぼ無しの状態で、他者にあまり迷惑をかけない程度の所謂お付き合いゴルフをしてきた。

道具にもお金をかけることはなく、ゴルフを始めた頃から亡くなった父のゴルフバックを使用しており、父が生前使用していた「ミズノ7番アイアン」を”ラッキーセブン”の意味から、またお守りとして、1本だけバックにさしている。ちなみに私が使用しているのは別メーカーのクラブである。

そのコンペが終わり、何気なく過ごしていたある日、突然亡くなった父が夢に出てきたのであった。極まれにお出ましになるものの、いつもはボヤっとしていた。だが、その時の父は鮮明であり、いつものヘアースタイルにスーツを着てゴルフバックを持っていた。

翌朝目覚めても、いつもになく鮮明な記憶が残っており、不思議な夢だった。父はゴルフ好きだったので、私がゴルフしているのを喜んでくれているのだろうか、くらいの感覚でいたある日、たまたま素振り練習をしようとゴルフバックを空けると、その7番アイアンがない事に気付いた。

動揺して必死に記憶を辿るも思い当たる点がない。困ったな、どうしようと考えた末、ゴルフコンペで同伴していた人に確認しようと考えた。翌日、仕入れ先の営業担当者を通じて同伴者にコンタクトを取ってもらい、アイアンの有無を確認してもらった。

少し時間がたってから、同伴者から「ありました」との連絡があった。おそらくカートに乗せていた右隣の同伴者がミズノを使用しており、キャディーさんが無意識のまま、その方のバックにさしていたのではと察した。

そしてその7番アイアンが返ってきた時に、同伴者から「こんな難易度の高いクラブで練習しているのですか?」と言われた。本当にホッとしたのと同時に、父のゴルフの腕前が改めて分かった瞬間だった。

今になって振り返ると、父が夢に出てきたのは、7番アイアンがなくなっていることを私に早く気付いて欲しかったのだと思う。そのことを考えると懺悔の想いにかられた。私としては自分だけわかっていればいいと思っていたのだが、その7番アイアンにカバーを付けるとか、コースの時は外すとか、周囲に対する配慮が足りなかったことを反省した。

ゴルフはマナーのスポーツと言わている。同伴者にしてみれば、自分のバックの中に違うクラブが入っていたとは、なかなか言いにくかったのではないか。それでも、「ありました」と返却して下さった同伴者の方や、クラブを探してくれた営業担当者の好意に、感謝するばかりだった。

私自身そのような混乱を防ぐために、注意が足らなかった部分は改めていきたい。

その後の数週間はいつもより回想する事が多かった。父が夢に出てきたのは、きっと父からのメッセージだったと受止めて胸に秘めておきたい。父が亡くなって早32年になるが、父は今でも私の近くにいるのだと改めて感じさせてくれた、7番アイアンであった。

                                  合掌 椙原