暖かい気持ちと感謝のこころ

まだまだ残暑厳しいなか、世間ではお彼岸の時期ですね。暑さ寒さも彼岸までとは言いますが、しかしこうも暑さが続くと滅入ってしまいます。

皆様はお彼岸をいかが過ごされたでしょうか?

立正佼成会では春と秋のお彼岸の時期に、会員が自分の大切な方やご先祖様の御戒名を教会道場に持ち寄り、一定の資格を持った方々が代表して、1人ひとりの故人に思いをよせ真心を込めて読み上げ供養する行事があります。

(彼岸会式典 戒名の読み上げ)

先日、徳島教会では秋のお彼岸供養の式典があり私もその場にいました。そこで会員Aさん(以下Aさん)がそのとき実際に体験した、「あたたかい気持ちと感謝のこころ」を教えてくれたのでご紹介します。

Aさんは40年以上の大ベテラン会員で、年齢的にも無敵(笑)で元気な70代のおばちゃん! その方はいつものように時期が近づくと、ぱぱっと手際よく準備を進めていたそうです。

そんなときにふと、同じ地区で昨年亡くなった1人の会員さんを思い出したそうです。その人は100歳の大先輩で、これまた大ベテランの会員さん(以下Bさん)。

長年お互いに、「〇〇はん!」「おば!」と呼び合い、公私ともに交流も深かったといいます。しかしBさんの家族はそもそも信仰に大反対で、Bさんが昨年亡くなった時も、そのことをAさんは教えてもらえなかったそうです。

1年が過ぎたころ、Aさんが近所のスーパーでBさんのご家族にばったり出会ったとき、その事実を知ったといいます。AさんはBさんの家庭の事情をよく知っていたので、結局仏壇にお参りすることも出来ず、亡くなったBさんに線香の一つもあげられないままでした。Aさんは、そのことが今日に至るまでずっと心に引っかかっていました

今年、Aさんは「おば!ずっと放置しててごめん」という気持ちでBさんの戒名をつけ、秋の御彼岸会の式典に持ち寄りました。

当日の式典では何百件もの御戒名が集まり、それを何十人もの代表会員が手分けして読み上げ、供養を行ないます。戒名は担当者から均等に順番に割り振られるので、誰の戒名を読み上げるかは分かりません。旧知の方のもあれば、存じない方の戒名もあります。

式典が始まり、Aさんはいつものように戒名を読み上げていったそうです。担当したのは20体近くの戒名で、あぁこの人いたなぁ、とか、あんな人だったなぁと思うことも多かったそうです

手際よく進め、さぁあと一件で終わりだ、と思って最後の1件を手に取ったとき、ぎょっとしたそうです。「おば···」

Aさんは涙が止まらず、他の人が読み終わるまでずっとBさんの御戒名を繰り返し読み続けていました。「おば!ありがとう!やっぱりおばやな!!こんなにたくさんいるのに結局うちのところに来たんかい!寂しくさせてごめんな!」

その時に心につかえてたいろんなモヤモヤも吹っ飛び、一緒に活動していた頃を思い出して暖かい気持ちになったそうです。そして同時に、いつまでも見守ってくれていることに感謝し、これから1つずつ恩返しをしていこうと決心されたそうです。

式典が終わって帰ろうかとしていた時、Aさんからその話を聞いて、私も胸がいっぱいになりました。これはたまたま一例で、他の人にもそれぞれの思いやエピソードはたくさんあったと思います

いま世の中は高度にICT技術が発達し、遠く離れていても繋がれる時代。その一方で、時として人間関係やこれまでの常識さえも希薄になったり通用しなくなっている時代です。そんな中においても相手を思い、どんな時でも真剣にぶつかり合っていけば至誠は必ず通ずるもの。こうしてAさんから「温かい気持ちと感謝のこころ」を教えてもらい、じゃあ私はどうだろう、と考えました。

誰かのために本気になれる自分なのか····。

私も世の中では中堅世代になり、いつしか要領よく生きることを覚えてしまったのかも知れません。Aさんと「おば」から教えてもらった教訓を胸に、誰かのために本気になれるよう、今日からまた頑張っていこうと思います。

二木