排便回数が減り便が出にくくなった状態が便秘です。排便が1週間あたり3回未満が便秘と定義されますが、排便の回数は人によって大きく異なります。1日に何回もトイレに行く人もあれば、1週間に1-2回という人もあります。パターンはどうであれ、その人が便通の不具合を感じなければ問題ないとも言えます。
全般に言えることは、排便間隔が長くなるほど便が出にくくなる点です。

便秘の特徴として:
・便が乾いて硬い
・排便時に痛みがあり便が出にくい
・排便後に便が残った感じがする
便秘の原因として下記のようなものが考えられます。
生活習慣
・食物繊維が少ない
・水分摂取が不足
・運動不足
・トイレにいく時間がずれるー旅行、食事の時間がずれる、寝る時間が変わる等
・ミルク・チーズの大量摂取ー大量の飽和脂肪酸は胃からの排出を遅らせ食物の腸内通過速度を落とす、食物繊維が乏しいなどの理由
・ストレス
・便がしたくなるのを我慢する
薬剤(例)
・強い鎮痛剤ーコデインなどの麻薬成分を含んだ薬剤
・痛み止めーブルフェン(イブ)など
・抗うつ剤ープロザック トリプタノールなど
・制酸剤ーカルシウムやアルミニウムを含む薬剤(アルジオキサ、サクロン、太田胃酸、パンシロン、キャベジン、第一三共胃腸薬)
・鉄剤ーフェロミア、フェログラデュメット
・抗アレルギー剤ーレスタミンコーワ錠
・高血圧の治療剤ーカルシウム拮抗剤(ワソラン、ヘルベッサー、アダラートなど)、ベータ遮断剤(アテノロールなど)
・精神の薬ー統合失調症の治療薬(クロザリル、ジプレキサ)
・抗てんかん薬ーアレビアチン、ガバペン
・吐き気止めーオンダンセトロン
便秘をきたす薬剤は多数あります。
疾患
・内分泌疾患ー甲状腺機能低下症、糖尿病、尿毒症、高カルシウム血症
・大腸直腸がん
・過敏性腸症候群
・大腸憩室炎
・骨盤筋がうまく協調できないために起こる便秘ー骨盤筋は骨盤の中や下腹部にある臓器を支えており、排便時にはこれらの筋肉が正常に働く必要があります。
・直腸が便意を感じない(神経の障害による)
・直腸の潰瘍
・骨盤臓器脱ー子宮、膀胱、直腸などの骨盤内の臓器が骨盤底の筋肉や組織の緩みによって正常な位置から下がり、膣から脱出したり、膣内に突出したりする状態
・妊娠、出産、骨盤の外科手術、脊髄や腸の損傷
・不安、うつ、摂食障害
・強迫性障害ー「手が汚いんじゃないか」「鍵を閉めたかしら」などの考えが繰り返し頭に浮かび、手を洗う行為や鍵が閉まっているかを確認する行為が止められない等で、生活に支障をきたす状態
・排便に対する恐怖症
・腸の運動機能が一時的に麻痺して動かなくなる状態ー麻痺性イレウスなど
・神経の疾患ー脊髄損傷、多発性硬化症、パーキンソン病、脳卒中など
・脊柱管狭窄症ー腸の運動を支える脊髄神経を圧迫して消化機能を弱くしてしまう
・下剤の使いすぎで腸の運動が鈍るための便秘
・腸閉塞
・消化管の障害ー瘻孔(怪我、感染、手術などで臓器に穴があく)、結腸閉鎖症(生まれつき大腸が途切れている)、腸捻転(腸がねじれて腸閉塞をおこす危険な状態)、腸重積ー腸の一部が隣の腸中に入り込み腸閉塞を起こす病気。乳幼児に多い緊急事態。
・多発性に内臓を障害する疾患ーアミロイドーシス、膠原病(SLE、強皮症)
便秘の症状
・便通が週3回未満
・便が乾いて硬い
・排便困難、便通過時の痛み
・腹痛、腹部膨満、吐き気、残便感
自分でできる便秘対策
・水分をしっかり取るーカフェインとアルコールは脱水傾向を招くので控えましょう
・食事を工夫ー食物繊維の豊富なものを食べましょう
・身体活動を増やしましょうー運動をすると体中の循環が良くなり、血中の酸素が増加、老廃物を体外に押し出す筋肉も活発になります。 10分の散歩でも効果あり。
・腸内善玉菌(ビフィズス菌、乳酸菌など)ー我々の体内には数兆個という細菌が存在し、その大半は腸内にいます。腸内細菌のあるものは病気の原因となりますが、人の健康に欠かせないものもあります。善玉菌と悪玉菌のバランスがくずれると、消化機能を含めた体の基本的な機能が障害されます。腸内善玉菌の豊富な食事を摂ると規則正しい便通になるというデータがいくつか見られます。脂肪成分の多い乳製品を控えましょう。脂肪分がないか、または少ないヨーグルトは善玉菌を供給する自然食品です。発酵食品(味噌、キムチなど)は善玉菌の豊富な食品です。
・時間をとりましょうー少し早起きして朝食を摂り、腸を動かしましょう。温かい飲み物と食事は便意を促します。家のトイレは最もリラックスできます。ただしトイレが長すぎると、力みすぎて痔を起こす可能性があるので、トイレの時間は10分以内にしましょう。スマホやパソコンはトイレに持ち込まないようにしましょう。
・しゃがむ姿勢ートイレに座る時、多くの人は椅子にこしかける形をとりがちです。しかし排便時には異なる姿勢が適しています。最適なのは膝をお尻よりも少し高くしたしゃがみ姿勢です。
・便がしたくなったら我慢しないー 簡単ですがとても大事です。トイレに行く暇もないほど忙しいと便秘の原因になります。
・ストレスの管理ー脳の中の出来事は腸と密接な関係があります。実際、便秘は不安・うつに伴うことが多く見られます。ストレスを感じると、我々の身体は戦闘-逃避(敵・災難と戦うか、逃げろ!)のモードになります。このとき、コルチゾール、アドレナリンといったストレスホルモンが身体中に充満します。これらのホルモンは消化機能や、命を保つのにすぐに必要のない機能は抑えられます。いつもストレスを抱えていると腸の運動低下が問題になります。
休憩、深呼吸、瞑想、ヨガ、ジャーナリング(頭に浮かんだ思考や感情をありのままノートに書き出す。自己理解を深め、ストレス軽減やメンタルヘルス向上に効果がある)、自分でどうにもならないときには誰かに話を聞いてもらう
*本文は主としてクリーブランドクリニックから引用しました。意訳をした部分もあるので、もし不適当な箇所が見つかりましたらお詫びして訂正させていただきます。
Dr. Sumi