背番号11の奇跡


私は小学校1年生から22歳までサッカーをしてきた。とてもこだわりを持って取り組んでいた事だけに、今でもサッカーは最も気になるスポーツの一つである。思い出に残るのは、中学生の時(1993年)にプロサッカーリーグ【Jリーグ】が開幕したことである。当時は日本中がサッカーに熱狂していた。国立競技場で行われた読売ベルディ対横浜マリノス戦(当時名)の試合では、大観衆の凄い熱気がテレビからも感じられ、興奮していた記憶が蘇る。今日のサッカーの礎と言えよう。

その中で、今でもその人を見るとテンションが上がり見入ってしまう人がいる。その名は、“三浦知良”さん・KAZUである。現在では58歳でJFLというカテゴリーに属し現役選手である。ご年齢からして凄い以外の言葉が見つからない。 KAZUと言えばFWで背番号11、スパイク(シューズ)は正統派の黒のプーマである。とにもかくにも華があり、唯一無二の存在である。しかしながら背はさほど高くなく、足もとびきり早いわけでもなく体格面は平均値くらいである。

私が思う特徴は、身体の瞬発力が高く、一瞬で抜き去るブラジル仕込みのドリブルとシュートである。今まで幾度なくKAZUのゴールで勇気をもらってきた。現在に至るまで、三苫薫選手や本田圭佑選手などの海外リーグで活躍する選手は多いが、当時はアジア人として初めて、イタリアセリアAに移籍したのはKAZUであり、野球界の野茂英雄選手と同様にパイオニアでもある。本当に日本サッカー界の第一人者と言えよう。


バラエティ番組にも数多く出演されているのを観てきたが、サッカー関係者やスポーツ業界にも多大な影響を与えている。そして何より、KAZUのサッカー選手としてのプロ意識は、私では語る事が出来ないほど高く深い。年を重ねても若手と一緒にオフはキャンプに励み、自分の体を徹底的に追い込み、更に食事制限で筋力量を維持する。


サッカーを離れてもプロ意識は高く、ファンに幻滅される格好はしないという事で、近くのコンビニに行くにもスーツで行かれるそうだ。更にはアルマーニのスーツが好きであることから、とてつもなくお洒落である。ちなみKAZUがカラオケで一番歌うのは、田原俊彦さんの”抱きしめてTONIGHT”だそうだ。トシちゃんとはとても仲が良いとの事。


そのようなKAZUのキャリアの中でも多くの世代に知られているのが、1998年フランスワールカップのメンバー落選でないかと思う。実はKAZUはサッカーワールドカップ本戦には一度も出たことはない。私も当時、ものすごく悲しかった事を今でも覚えている。


当時は、徐々に迫る若手との世代交代の波とコンデション不良も重なり、落選となった。個人的にはその雄姿を観たかった。しかしKAZUは、帰国後も周囲には腐る態度をみせないどころか即練習に励んだ。帰国会見で、もっと上手くなりたいと話していたのを見た時は心を揺さぶられた。KAZUの名言の一つに『満足した時点で成長は止まる』というのがある。その短いフレーズは今でも私のバイブルの一つだ。だから私は営業成績が良くても、満足したという言葉は極力使わないことにしている。


時が流れ、現在ではKAZUは58歳だ。競争の激しいサッカー界で契約をし続けるのは、並大抵な事ではない。現状に満足することなく常にトレーニングと体のケアを怠らない。見えないところでどれだけ努力をなさっているかわからない。

「いつまで現役を続ける気だ?」と周囲に言われても、叱咤激励で有難いと受け止める御心は、常不軽菩薩様のようである。私はこれからもKAZUを応援していきたいし、心に留めてきたい。

背番号11が最もよく似合い、今までの多くの奇跡を是非YouTubeで見てもらいたいと願う。7分程度の動画で伝えたいことがほぼ凝縮されている。

件名: キングカズ 「ぶれない心を持つ男 三浦知良」

                                   合掌 椙原