血圧は人の健康・病気を直接的に左右するものであり、高血圧の治療に際してはさまざまな角度から検討する必要があります。高血圧治療の基本的な考え方は世界共通ですが、国の事情により微妙な差を生じることもあります。今回は外来で測定した血圧から見た高血圧の診断基準を米国・欧州・日本の3国で比較してみました。
①米国の基準(AHAアメリカ心臓教会から一部加工して引用)

②欧州の基準(欧州心臓病学会の資料から作図)

③日本の基準(厚生労働省の資料から作図)

米国では正常値は120/80mmHg未満、 130/80mmHg以上は高血圧という、もっとも厳しい数値を採用していますが、同時に血圧測定に際しても厳密な条件をつけています。
正確な外来血圧測定のためのチェックリスト(uptodateより一部抜粋)
・30分前にはカフェイン、運動、タバコをやめる
・トイレは済ませる
・リラックスする
・足を床につけ背もたれ椅子に5分超座る
・カフを巻く腕には衣服を着ない
・待ち時間・血圧測定時には話をしない
・血圧測定時にはスマホなどを使わない
・腕は心臓の高さで机の上に置く
・適正な大きさのカフを使う
・可能なら電子血圧計を使う
(医師が測ると緊張する)
・1-2分の間隔で2回測る
・複数回の外来血圧測定値を平均する

日常の診療では、患者さんが急いでいる、ザワザワした待合室、多くは下着やワイシャツのような服の上に血圧計のカフを巻く、背もたれのない診察用の椅子、診察中も話をするなど、上記のようにはいかない点が多々あります。日本やヨーロッパの診断基準は米国よりも緩く安静時140/90mmHgと共通していますが、このような状況を考慮したものかどうかは不明です。
一方、血圧は年齢とともに変化していきます。上述の基準値は基本的にすべての成人に当てはまるとされていますが、同じ血圧の数値であっても、若い人と高齢者とでは自ずからその意味合いは異なります。一般に、収縮期血圧は年齢とともに上昇していきますが、拡張期血圧は50歳代をピークにしてその後は下降します。収縮期血圧と拡張期血圧との差は脈圧と呼ばれ、中年以降に脈圧が増大していくのは大動脈の硬化を反映したものと考えられています。
平均的な血圧をそのまま当てはめると、ほとんどの高齢者が高血圧という結論になりかねません。お一人ひとりの血圧を考える場合、その数値だけでなく、その人の心臓や脳血管の硬化の度合い・生活習慣など種々の背景や高血圧を治療することの利益・不利益を考慮する必要があります。

18歳以上の米国人男性についての年齢・人種別の平均的な血圧
赤の点線は、”100+年齢の1/2”がその人の最適な収縮期血圧ではないかという
筆者先生のご提案です。例 80歳では100+40=140mmHg
(AHAの資料を一部加工引用)
Dr. Sumi
